靴下 × 転倒 × 訪問リハビリ
【靴下が転ぶ原因になる?】靴下の重ね履きと滑り止めについてリハビリが解説
訪問リハビリテーションの視点から
冬になると、「足が冷えるから」と靴下を重ね履きする高齢者もいます。
また、滑らないように滑り止め付きの靴下を選ぶこともあるでしょう。
もちろん、足元を冷やさないことは大切です。
しかし、訪問リハビリの現場では、防寒のために選んだ靴下が、かえって歩き方に影響しているのではないかと感じる場面があります。
今回は、靴下と転倒について、訪問リハビリの視点から考えてみます。
【実際の場面①】靴下の重ね履きで滑った
以前、女性の高齢者で厚手の靴下を2~3枚重ねて履いている方がいました。
理由は「足が冷えやすいから」ということでした。
ところが室内を歩いている際、足元が滑って尻もちをついたことがありました。
幸いにおケガなどには至らなかったです。
もちろん、転倒には筋力やバランス能力、床の状態、歩き方など、さまざまな要因があります。
そのため、靴下を重ねたことが転倒の原因と断定することはできません。
本人の話では、「靴下が厚くなって、滑りやすかったかもしれない。」とお話しを伺っています。
靴下を重ねることで足と床との摩擦や、足の動かしやすさ、室内履きとのフィット感が変わることがあります。
重ね履きした靴下の状態で普段どおり歩けているかを確認することが大切です。
【実際の場面②】滑り止めが「つまずき」につながることも
女性の高齢者で家族に買ってもらった滑り止めの靴下を気に入って履いていました。
そのうちに段差も何もない所でつまづきやすくなったという話を伺いました。
歩きを確認してみると、靴下の滑り止めが引っ掛かりつまづく様子がありました。
これは靴下の問題ではなく、歩く際に元々すり足や足がうまく上がっていない状態の場合は引っ掛かってしまうようでした。
滑り止めが付いていると、床で足が滑りにくくなります。
靴下と床材の摩擦を調べた研究では、滑り止め付き靴下は摩擦係数が大きく、滑りにくい一方、摩擦が大きくなりすぎることで生じるつまずきについても考慮が必要とされています。滑り止めの位置や面積、素材なども関係します。
例えば、先ほどの例のようにすり足傾向があり、足を十分に持ち上げずに歩いている方。
このような場合、足を前に出す際に靴下の滑り止めが床に引っかかり、スムーズに足を運べない可能性があります。
滑り止めのついた靴下を履いた上で、問題なく歩けているか確認することが重要です。
【転倒対策】靴下だけでなく「しっかり歩ける」をつくる
東京消防庁によると、2024年に「ころぶ」事故で救急搬送された高齢者は73,500人でした。
そのうち「住宅等居住場所」での発生は42,180人。さらに住宅等居住場所での事故をみると、屋内での発生が39,053人と9割以上を占めています。
つまり、高齢者の転倒対策では、外出時だけでなく普段生活している家の中で安全に歩けるかが重要です。
そこで考えたいのが、下肢、特に足指や足底、下腿部をしっかり使うことです。
足底の内在筋を対象とした研究では、トレーニングによって足部機能や動的バランスが改善する可能性が報告されています。ただし、研究の質や対象者にはばらつきがあり、足底筋トレーニングだけで転倒を防げるとまでは言えません。
また、2026年の無作為化比較試験では、足趾への荷重を高めるトレーニングによって、立位での足趾圧力と最大歩行速度が改善しました。
そのため、訪問リハビリでは、
- 足指を開く・閉じる
- 足底の筋肉を使う運動
- かかと上げ
- 下肢の筋力トレーニング
- 立位での前後・左右への重心移動
- 実際の歩行や方向転換の練習
などを、その人の状態に合わせて組み合わせます。
重要なのは、筋肉を鍛えることだけではありません。
足底で床を捉え、重心を安定して移動させ、足を持ち上げて次の一歩を出す。この一連の動作を、実際の歩行につなげることが大切です。
なお、歩行が不安定な方では杖や歩行器などの福祉用具を組み合わせることも選択肢になります。用具選びについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【寒さ対策】足元を厚くするだけではない
では、足が冷える場合はどうすればよいのでしょうか。
ポイントは、「足先をとにかく厚くする」ことだけを防寒方法にしないことです。
靴下を重ねる場合には、
- 足指が窮屈になっていないか
- 室内履きがきつくなっていないか
- 歩幅が変わっていないか
- 足が床に引っかかっていないか
を確認します。
レッグウォーマーなど、足元を厚くしすぎない防寒方法も選択肢になります。
そして何より、防寒した状態で実際に歩いてみることが重要です。
まとめ|温かいだけでなく「歩きやすい」足元へ
冬の足元対策では、「厚い靴下」「滑り止め付き靴下」を選べば安心とは限りません。
大切なのは、
温かいこと。
足を動かしやすいこと。
床との摩擦が適切であること。
そして、安定して重心を移動しながら歩けること。
です。
足指や足底、下腿部を鍛えることは、足部機能やバランスを支える一つの方法です。
最終的な目標は、足の筋肉を鍛えることそのものではありません。足底で床を捉え、重心を安定させ、スムーズに次の一歩を出せること。
冬の防寒も、靴下だけを見るのではなく、【その人が安全に歩けるか】まで含めて考えることが大切なのではないでしょうか。
関連記事
▶ 【頑張らないシニアのフレイル予防】シニア世代のフレイル予防はお出かけから|社会的処方・博物館処方とは
▶ 【杖・歩行器は購入?レンタル?】訪問リハビリが実例を元に解説
▶ 【おむつのリサイクル】訪問リハビリによるトイレ自立によるおむつを減らす
この記事を書いた人
med-care-design 運営者
- 訪問リハビリテーション歴12年
- 作業療法士(OT)
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 福祉住環境コーディネーター2級
- 現在は管理職として後進の指導にあたりながら、自身も臨床業務を継続中
延べ百件以上の患者様宅に訪問し、さまざまな場面を見てきました。患者様の生活する力を可能な限り伸ばすことを意識してリハビリテーションを行なっています。現場で得た気づきと、学会ガイドライン・専門機関の統計・公的資料などの根拠を、必ず両方そろえて発信することを心がけています。
※本記事のうち「実際の場面」に関する記述は筆者自身の臨床経験に基づく内容(プライバシー保護のため一般化・匿名化しています)、それ以外の統計・研究に関する内容は本文中に記載の出典によるものです。
出典・参考資料
- 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(2024年の高齢者「ころぶ」事故の救急搬送状況、発生場所)
- 日本家政学会「異なる床材における靴下の滑りについて」(靴下・床材による摩擦特性と、滑り止めによる過剰な摩擦・つまずきについて)
- Futrell EE, et al. The effects of intrinsic foot muscle strengthening on functional mobility in older adults: A systematic review. Journal of the American Geriatrics Society, 2022;70(2):531-540.
- Wei Z, et al. Effect of intrinsic foot muscles training on foot function and dynamic postural balance: A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE, 2022;17(4):e0266525.
- Kamasaki T, et al. Effects of an Intervention for Improving Toe Pressure Strength on the Physical Function of Older Adults Requiring Long-Term Care: A Double-Blind Randomized Controlled Trial. Journal of Geriatric Physical Therapy, 2026.


コメントを投稿
別ページに移動します