【おむつのリサイクル】リハビリによるトイレ自立

在宅リハビリ × 環境・経済

紙おむつごみを減らす鍵は「リサイクル」だけじゃない
訪問リハビリが実現する排泄動作のトレーニング

訪問リハビリテーションの視点から

はじめに

紙おむつごみが増え続けているというニュースを目にしました。少子化で子ども用の需要が減る一方、高齢化によって大人用の紙おむつごみが急増しているという内容です。

(出典:日本経済新聞 朝刊「紙おむつのゴミ 少子化でも増加 大人用の需要増、リサイクルが急務に」2026/07/06)

記事では水平リサイクルという技術的な解決策が紹介されていましたが、訪問リハビリテーションの現場に立つ立場から見ると、そもそも紙おむつの使用量そのものを減らせる可能性があると思います。今回は記事の内容を踏まえつつ、リハビリによる排泄自立支援について説明したいと思います。

この記事でわかること

環境省によると、使用済み紙おむつの廃棄量は2023年度に216万トンで、一般廃棄物全体の5.5%を占めています。2050年度には最大で全体の12.7%(277万トン)まで膨らむ見通しです。

背景にあるのは、子ども用と大人用の需要の逆転です。大人用の生産枚数は2023年に子ども用を上回り、鹿児島県大崎町のような高齢化率の高い自治体では埋め立て処分場の容量が逼迫しています。解決策として、ユニ・チャームや花王による水平リサイクルの実用化が進められている一方、全国的にはまだ焼却処分が主流という現状も紹介されていました。

1. 大人用紙おむつが急増する構造

日本衛生材料工業連合会のデータによれば、子ども用紙おむつの生産量は2017年の159億枚をピークに減少を続け、2025年には71億枚まで落ち込みました。一方、大人用は同期間で78億枚から105億枚へと増加し、2023年には生産枚数で大人用が子ども用を逆転しています。

重量の面でも大人用の負荷は大きく、一般的な高齢者の排せつ物量で計算すると、大人用紙おむつの1日あたりの使用後重量は1キログラムを超え、子ども用の2.5倍以上になるとのことです。鹿児島県大崎町では65歳以上の高齢者の割合が約40%に達し、使用済み紙おむつは町の一般ごみの約2割を占めています。この数字は、紙おむつが「排泄ケアの結果」として自動的に発生するものだという前提のもとで語られています。訪問リハビリの現場に立つ立場からは、この前提自体を見知す余地があると感じています。

2. リサイクルの現在地と、その先にある限界

記事で紹介されている水平リサイクルは、使用済みの紙おむつを新品の原料として再生する技術です。大崎町と志布志市はユニ・チャームと連携し、2026年7月からは介護施設からの回収も始まり、リサイクル量を年500トン規模に倍増させる計画だといいます。

数値で見る 環境省の2023年調査では、回答した自治体の約9割が紙おむつを分別回収していませんでした。実際にリサイクルを実施している自治体は2023年度時点で21自治体にとどまっています。

環境省は2030年度までに150自治体でリサイクルの導入・検討を進める目標を掲げていますが、現状の21自治体からは大きな開きがあります。加えて、リサイクルの普及にはコストという壁があり、排水量や水使用量を抑える新技術の開発が進まなければ、全国への広がりは限定的なものにとどまる可能性があります。リサイクルは出た後のごみをどう処理するかというアプローチであり、紙おむつの使用量そのものを減らすアプローチとは役割が異なります。両方が組み合わさって初めて、根本的な解決に近づくのではないかと思います。

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3. リハビリマネジメントがもたらす「排泄動作」の自立

訪問リハビリの現場で日々行っているのは、計画的な評価とアプローチを組み合わせる「リハビリテーションマネジメント」や「生活行為向上リハビリテーション」です。単に筋肉を鍛えるだけでなく、実際の生活行為そのものにアプローチするこの取り組みについて、厚生労働省の調査報告でもその明確な客観的効果が実証されています。

調査報告データ 定期的にリハビリテーションマネジメントを行い、生活行為向上リハビリを実施した群では、介入しなかった群と比較して、3ヶ月〜6ヶ月後の排泄動作(トイレへの移動、ズボンの着脱、拭き取り)の自立度が約20〜30%有意に維持・改善したという報告があります。

このデータが示しているのは、おむつが必要になるかどうかの境目は、生活全体を捉えた計画的なリハビリ介入によって大きく変わり得るという事実です。排泄の自立と言っても、そこには非常に多くの複合的な動作が含まれています。尿意を感じてから、

  • 1 トイレまで歩いて安全に移動する
  • 2 便座の前でふらつかずにズボンを着脱する
  • 3 排泄後にしっかりと拭き取る

などといった一連の動作が、すべてスムーズに繋がって初めてトイレでの排泄が自立します。

訪問リハビリの現場では、これらの動作を細かく分析し、個々の生活環境や動線に合わせて訓練を重ねてしていきます。その結果、おむつを導入せざるを得なくなるまでの期間を可能な限り延ばしたり、一度おむつ対応になってしまった方でも「トイレに間に合うようになった」「日中のおむつの回数が減った」と再び自立のステップを踏み出せたりするケースを増やしたいと思っています。

まとめ――ごみを減らす前に、おむつを外せないか考える

紙おむつごみの増加という課題に対して、水平リサイクルは出た後のごみをどう資源化するかという重要なアプローチです。しかし、訪問リハビリの立場からは、そもそも使用量そのものを減らせないかという視点も並行して広めていく必要があると感じています。

リハビリによる効果はすべての高齢者に一律に当てはまるわけではありません。認知機能や併存疾患など個々の状態によって適応は異なります。ただ、このデータが示しているのは、紙おむつの使用が加齢による仕方のないとあきらめてしまうなかで、適切なリハビリテーションマネジメント次第で排泄動作が維持・改善し、変わりうる可能性があります。

本記事は日本経済新聞 朝刊「紙おむつのゴミ 少子化でも増加 大人用の需要増、リサイクルが急務に」(2026年7月6日)、および厚生労働省によるリハビリテーションマネジメント・生活行為向上リハビリテーションに関する調査報告データを参考に、筆者の訪問リハビリテーションとしての視点を交えて執筆したものです。

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