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【高齢者の食べたい】を支えるヘルパーと訪問リハビリの連携[実例あり]

 

在宅ケア × 食事支援 × 訪問リハビリ

訪問リハビリテーションの視点から

介護スタッフが高齢女性と弁当や惣菜を見ながら食事について相談する様子

はじめに

「せっかく買ってきてもらったけれど、なんとなく食べたくない」

「本当は別のものが食べたいけれど、ヘルパーさんに言いづらい」

訪問リハビリで食事について伺っていると、こうした声を聞くことがあります。

身体機能が低下すると、自分で買い物に行くことが難しくなり、家族やヘルパーに買い物をお願いする機会が増えます。

そのときに生じるのが、「本人が食べたいもの」と「実際に用意されるもの」の小さなズレです。

今回は、訪問リハビリの現場で経験した一つの事例をもとに、本人の「食べたい」を支えるために、ヘルパーと訪問リハビリがどのように連携できるのかを考えます。

※正式名称は介護福祉士ですが、その他介護士、ヘルパーなどいくつかの資格、名称があります。利用者さんとの話ではヘルパーさんとよく使用しますので、便宜上ヘルパーに統一させていただきます。

本人の食べたいものと、買ってきてもらったものの小さなズレ

私が訪問リハビリで実際に経験した場面です。

ある利用者さんと食事について話していたときのことです。

その方は、普段の買い物をヘルパーさんにお願いしていました。

しかし、購入してきてもらったお弁当について、

「ちょっと味が合わない」

「食べたいものと違うことがある」

と話されることがありました。

そこで私は、

「ヘルパーさんに、別のお弁当に変えてもらうよう伝えてみてはどうですか?」

とお伝えしました。

すると、その方は、

「毎回買い物してきてもらって申し訳ないから、あまり言えないんだ」

と話されました。

この言葉が印象に残っています。

本人には、

  • 「いつも買い物に来てもらっている」
  • 「忙しい中でお願いしている」
  • 「細かいことを言うのは申し訳ない」

という気持ちがありました。

一方、ヘルパーさんからすると、

「美味しそうなお弁当を買ってきてね」

「前、買ってきてくれた弁当お願いね」

と言われても、本人がどの商品をイメージしているのか分からないことがあります。

また、指定された商品が売り切れていれば、代わりに何を購入すればよいのか判断に迷うこともあります。

つまり、これは誰かの対応が悪いという問題ではありません。

本人の希望と、支援する側が把握している情報との間に、小さなズレが生じているのです。

この「小さなズレ」は、一度だけなら大きな問題にならないかもしれません。

しかし、食事は毎日繰り返されます。

「今日は食べたいものではなかった」という経験が続けば、食事そのものが楽しみではなくなってしまう可能性もあります。

だからこそ、在宅での食支援では、単に「食事を用意する」だけではなく、本人が何を食べたいと思っているのかを知ることが重要だと考えています。

高齢者の低栄養傾向

「食べたい」という気持ちを考えることは、単なる好みの問題ではありません。

高齢者の食生活では、栄養状態も重要な課題です。

厚生労働省の令和5年「国民健康・栄養調査」では、65歳以上でBMIが20kg/m²以下の「低栄養傾向の者」は17.7%でした。

男性では12.2%、女性では22.5%となっています。

単純に考えると、65歳以上のおよそ6人に1人が、この「低栄養傾向」の指標に該当します。

ただし、BMI20kg/m²以下であることと、医学的な「低栄養」が完全に同じ意味ではありません。この数値は、厚生労働省の調査で用いられている「低栄養傾向」の指標として捉える必要があります。

高齢者の低栄養には、食欲低下だけでなく、疾患、嚥下機能、身体活動量、生活環境など、さまざまな要因が関係します。

そのため、

「栄養のあるものを用意すればいい」

だけでは解決できないケースもあります。

本人が食べたいと思えること。

そして、実際に食べることができること。

この両方が重要です。

冷蔵庫から「選んで食べる」を大切にする

そこで、私がヘルパーさんと共同で実践していることは「一つのお弁当を決める」のではなく、「いくつかの食材を用意する」ことです。

例えば、

  • 焼き魚
  • ハンバーグ
  • 唐揚げ
  • 煮物
  • ピザ
  • 小さめのお惣菜
  • 野菜のおかず

などを冷蔵庫に用意しておきます。

食事の時間になったら、

「今日は魚にしよう」

「今日はハンバーグがいい」

と、本人がその日の気分に合わせて選びます。

これは、単に食品の選択肢を増やすという話ではありません。

「自分で選ぶ」という生活行為を残すことがポイントです。

身体機能が低下して、買い物をヘルパーさんにお願いするようになったとしても、「何を食べるか」は本人が選ぶことができます。

厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、介護保険における自立支援について、「主体的、選択的に生きること」という考え方が示されています。

もちろん、本人の好きなものだけを用意すればよいという意味ではありません。

食事制限、嚥下機能、栄養状態などを考慮しながら、安全に食べられる食品の中で、本人が選べる余地をつくることが大切です。

また、食品の保存方法や消費期限、再加熱の方法などにも注意する必要があります。

「今日は何を食べたいですか?」

という小さな選択が、その人の生活の中に残っている。

それ自体に意味があると思います。


高齢男性が冷蔵庫から弁当や惣菜を選び食事を準備する様子

訪問リハビリで「食べるまで」の生活動作を支える

冷蔵庫に食べたいものがあっても、食べるために準備が必要です。

実際には、

冷蔵庫まで歩く → 食品を選ぶ → 食品を取り出す → 運ぶ → 電子レンジなどで温める → お皿に盛り付ける → 食卓まで運ぶ → 食べる

という一連の動作があります。

訪問リハビリでは、こうした実際の生活場面を確認することができます。

例えば、

  • 「冷蔵庫まで安全に歩けるか」
  • 「食品を取り出せるか」
  • 「食品を持って移動できるか」
  • 「安全な姿勢で電子レンジを操作できるか」
  • 「温めた食品を運べるか」
  • 「お皿に盛り付けられるか」

といったことです。

これは単純な筋力だけの問題ではありません。

歩行、バランス、上肢機能、認知機能、判断力、住環境など、さまざまな要素が関係します。

そのため訪問リハビリでは、リハビリ室で筋力トレーニングを行うだけではなく、実際の自宅で、その人が生活を続けるために必要な動作を考えることができます。

例えば、電子レンジの高さが使いにくければ配置を変更する。

重い食器を持つことが難しければ、軽い食器を使用する。

立位が不安定なら、座って作業できる環境をつくる。

こうした環境調整も、生活を支えるリハビリの一部です。

「歩けるようになる」ことだけを目標にするのではなく、

「歩いて冷蔵庫まで行き、自分で食べたいものを選べる」

というところまで考える。

ここに訪問リハビリならではの役割があると考えています。

リハビリとヘルパーとの連携

ここで重要になるのが、ヘルパーさんとの情報共有です。

訪問介護の生活援助には、買い物などが含まれています。

一方、訪問リハビリでは、本人の身体機能や生活動作、自宅環境などを実際の生活場面で確認できます。

それぞれが見ている情報は異なります。

例えば、リハビリ中に、

「最近、ピーマンは美味しいと言って食べている」

「ナスはあまり好まない様子だった」

ということが分かったとします。

これを、

「ナスは少し苦手なようでした。反対に、ピーマンは好きなようで、美味しいと召し上がっているようです」

と具体的に共有する。

「野菜が苦手」という情報よりも、次の買い物に活かしやすくなります。

もちろん、その日の体調や気分によって食べたいものは変わります。

そのため、「最近こういう反応があった」という情報として共有することが大切です。

ヘルパーさんが日々の生活の中で得た情報と、訪問リハビリがリハビリや生活動作の中で得た情報をつなぐ。

その積み重ねによって、本人の希望をより具体的に支援できる可能性があります。

そして、必要に応じてケアマネジャーや家族、管理栄養士、看護師、言語聴覚士など、他の専門職とも情報を共有します。

大切なのは、誰か一人が食事をすべて管理することではありません。

それぞれの専門職が持っている情報をつなぎ、本人の「食べたい」を支えることです。

まとめ|「食べさせる」から「自分で選んで食べる」へ

在宅生活では、身体機能が低下すると、自分で買い物に行くことが難しくなることがあります。

その結果、家族やヘルパーさんに買い物をお願いする場面も増えていきます。

しかし、「支援を受けること」と「自分で選ぶこと」は両立できます。

今回紹介したように、

  • 本人の「食べたい」と実際に用意される食事のズレに気づく
  • 栄養状態だけでなく、本人の食欲や嗜好にも目を向ける
  • 一つのお弁当だけでなく、複数の食品から本人が選べるようにする
  • 冷蔵庫から食品を取り出し、温め、運ぶまでの生活動作を支える
  • 食事の好みや実際の反応をヘルパーさんと共有する

といった工夫が考えられます。

大切なのは、「何を買ってきてもらうか」だけではありません。

本人が、「今日はこれが食べたい」と選べること。

そして、「自分で選んだものを、自分で食べられた」という経験を残すことです。

食事は毎日繰り返される生活行為だからこそ、小さな選択の積み重ねが、その人らしい在宅生活につながるのではないでしょうか。

訪問リハビリの役割も、歩行能力や筋力だけを見ることではありません。

その人が自宅で、食べたいものを食べ、好きなことを続け、自分らしく暮らせるようにする。

そのために、ヘルパーさんや家族、ケアマネジャーなど、生活を支える人たちと情報を共有していくことも、在宅リハビリの重要な役割の一つだと考えています。


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出典・参考文献
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」/厚生労働省「介護サービス情報公表システム」

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