【猛暑・酷暑に対応】持続可能な介護サービスの実践

在宅リハビリ × 労働安全
真夏に訪問介護サービスの移動をしているイラスト

気温45℃時代の介護訪問サービス
スタッフを守る4つの暑さ対策

訪問リハビリテーションの視点から

はじめに

2026年7月9日付の日本経済新聞では、花王が冷却タオルの持続時間を2時間へ延ばす研究を進め、ワークマンは45℃を前提としたウェアを開発するなど、企業が猛暑を見据えた商品開発を加速させていることが報じられました。

背景には、2025年6月に改正された労働安全衛生規則があります。事業者には熱中症対策の実施が求められるようになり、暑さ対策は福利厚生ではなく、安全管理の一つとして位置付けられるようになりました。

一方、訪問リハビリテーションは建設業や製造業とは異なり、暑いからサービスを休止するという選択は現実的ではありません。さらに首都圏では、自転車で利用者宅を訪問するスタッフも多く、炎天下での移動は避けられません。

そこで今回は、日経新聞の記事を踏まえながら、私が訪問リハビリの現場で重要だと考える4つの暑さ対策をご紹介します。

記事の概要

記事では、花王が建設会社などから寄せられた「もっと長く冷たさを維持してほしい」という要望を受け、冷却タオルの改良を進めていることが紹介されていました。

また、ワークマンでは45℃を想定した高機能ウェアを発売するなど、40℃ではなく45℃を考える時代という考え方へ変化しています。

世界の暑熱対策市場も2030年には約4割拡大すると予測されており、企業は暑さ対策を重要な投資として捉え始めています。この流れは、屋外で活動する訪問リハビリスタッフにとっても決して他人事ではありません。

訪問リハビリスタッフが実践したい4つの暑さ対策

私は訪問リハビリに所属して10年経ちます。その間で熱中症になったスタッフはゼロでした。日頃から実践していることをお伝えしますので、参考になれば幸いです。

① 深部体温を上げない

熱中症対策で最も重要なのは、深部体温(体の中心部の温度)を上げすぎないことです。熱中症は、深部体温が約40℃前後まで上昇すると体温調節機能が低下し、意識障害や臓器障害を引き起こすリスクが高まります。

訪問リハビリでは、自転車で20〜30分移動し、そのまま利用者宅で40〜60分程度リハビリを行うことがあります。移動中に蓄積した熱が十分に下がらないまま活動を続けることで、体への負担は徐々に大きくなります。

実践例
  • 訪問へ出発する前に冷たい飲み物を飲み、首元を冷やしてから出発する
  • 気温が35℃を超える日は、連続した自転車移動を15分程度までを目安にする
  • それ以上移動する場合は、事務所・コンビニ・公共施設・商業施設など冷房の効いた場所で2〜3分だけ体を冷やしてから再出発する
数分でも冷房環境で休息するだけで、深部体温の上昇を抑えやすくなります。

② 直射日光を避ける

屋外では、気温以上に直射日光やアスファルトからの照り返し(輻射熱)が体力を奪います。夏場のアスファルトは50〜60℃を超えることもあり、自転車移動ではこの熱を直接受け続けることになります。

実践例
  • 帽子をかぶる
  • サングラスをかける
  • 長袖(吸汗速乾素材)を着用する
半袖の方が涼しいと思われがちですが、肌を直接日光にさらすことで皮膚温が上昇し、体力を消耗しやすくなります。通気性の良い長袖は、紫外線を防ぐだけでなく、結果として体への負担軽減につながることがあります。

③ 水分・電解質補給をルール化する

人は体重の約2%の水分を失うだけで、集中力や判断力、運動能力が低下するとされています。さらに、脱水状態では喉の渇きを感じにくくなることもあり、喉が渇いてから飲むでは遅い場合があります。

実践例(「1件訪問したら必ず飲む」というマイルール)
  • 午前中に500mLを飲み切る
  • 昼休みに追加で500mL補給する
  • 汗を多くかいた日はスポーツドリンクや経口補水液も活用する
水分補給を「感覚」に頼るのではなく、「習慣」に変えることが、暑い夏を乗り切るポイントになります。

④ 利用者・家族と「夏場の訪問ルール」を共有する

私の事業所の暑さ対策として、利用者・家族へ事前にお伝えしていることがあります。猛暑日・酷暑日には、スタッフの安全を確保するため、次のような対応が必要になります。

猛暑日・酷暑日の対応
  • 自転車の速度を落とす
  • 冷房の効いた場所で休憩する
  • 水分補給の時間を確保する
その結果、訪問時間が数分〜十数分前後することもあります。契約時や夏前のタイミングで「猛暑日はスタッフの安全を確保した上で訪問いたします。交通状況や暑さの影響により訪問時間が前後する場合があります。その際は事前にご連絡いたします。」と説明しておくことで、利用者や家族にも理解していただきやすくなります。

スタッフが熱中症や体調不良で離脱すれば、その日の訪問だけでなく、その後の利用者へのサービス提供にも影響が及びます。時間どおりに訪問すること以上に、安全に訪問を継続することが重要です。

ロゴのイラスト

コラム|私が実践している"裏技"(※緊急時の応急的な対策)

これは一般的な熱中症対策として積極的におすすめする方法ではありませんが、どうしても冷房のある場所へ避難できない状況では、気化熱を利用して体温を下げることがあります。

応急的な方法(※積極的な推奨ではありません)
  • 帽子を水で濡らしてから着用する
  • 長袖やアームカバーの袖を濡らす
  • 首元のタオルを濡らす
水が蒸発するときには熱を奪う「気化熱」という現象が起こるため、一時的に体表面の温度を下げる効果が期待できます。ただし湿度が高い日は効果が弱く、衣服が乾けば冷却効果もなくなるため、あくまで緊急時の一時的な工夫です。最も大切なのは、冷房の効いた場所で休憩し、十分な水分・電解質を補給することです。

まとめ

訪問リハビリは利用者の生活を支える仕事ですが、その前提にはスタッフ自身が健康で安全に働けることがあります。この夏は、ぜひ次の4つを意識してみてください。

  • 深部体温を上げない
  • 直射日光を避ける
  • 水分・電解質補給をルール化する
  • 利用者・家族と夏場の訪問ルールを共有する

猛暑は毎年の課題です。だからこそ、気合いや慣れで乗り切るのではなく、科学的な知見と現場での工夫を組み合わせ、安全に訪問を続けていきましょう。

本記事は日本経済新聞(2026年7月9日付)の報道内容を参考に、筆者の訪問リハビリテーションとしての実務経験を交えて執筆したものです。

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