【健康は最大の資産】「健康貯金」が将来の家計を守る

 

健康 × 家計・経済

【健康は最大の資産】

「健康貯金」が将来の家計を守る
訪問リハビリスタッフが伝えたい生活防衛という考え方

訪問リハビリテーションの視点から

はじめに

物価の上昇が続く中、「少しでも生活費を抑えたい」「将来に向けて資産形成をしたい」と考える方は多いのではないでしょうか。私もそのひとりです。

節約や投資はもちろん大切です。しかし、医療・介護の現場で働く訪問リハビリスタッフとして日々利用者さんやご家族と関わる中で、それ以上に大切だと感じる資産があります。それが健康です。私は、この考え方を「健康貯金」と呼んでいます。

健康貯金とは、毎日の歩行や家事、買い物、自宅での運動など、日常生活の中で身体を動かす習慣を積み重ねることです。その積み重ねが、将来も自分らしく生活できる可能性を高め、結果として家計や家族の負担軽減につながることがあります。

今回は、公的データと訪問リハビリの現場で感じていることをもとに、健康貯金が生活防衛につながる理由を考えてみます。

1. 介護には想像以上の時間と費用がかかる

介護は誰にでも起こり得ます。しかし、実際にどれくらいの費用や期間が必要になるかは、あまり知られていません。

生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」より
  • 介護にかかる月額費用:平均9.0万円
  • 介護期間:平均4年7か月
  • 住宅改修や介護用品購入などの一時費用:約47万円

また、在宅介護は平均約5.3万円/月、施設介護は平均約13.8万円/月という違いもあります。

もちろん、要介護度や家族構成、地域によって必要な費用は異なります。しかし、身体機能が低下するほど生活に必要な支出が増える傾向は、多くの家庭に共通しています。

2. 本当に増えるのは「生活コスト」

介護保険は生活を支える大切な制度ですが、それだけで生活が成り立つわけではありません。訪問リハビリの現場では、介護保険サービス以外の支出が少しずつ積み重なっていく場面をよく目にします。

積み重なる支出の例
  • 通院時に介護タクシーを利用する
  • 外出が難しくなりお弁当サービスを利用する
  • 紙おむつや尿取りパッドなどの消耗品が必要になる
  • 家族が付き添うために仕事を休んだり早退したりする
  • 買い物や掃除などを家族やサービスに頼る機会が増える

一つひとつは大きな金額ではなくても、毎月積み重なることで家計への影響は小さくありません。

3. 健康貯金が生活の選択肢を広げる

ここでお伝えしたいのは、「健康貯金をすれば介護費が減る」ということではありません。病気や加齢を完全に防ぐことはできません。

しかし、訪問リハビリの現場では、身体機能が改善することで生活の選択肢が広がり、結果として生活コストや家族の負担が軽くなる場面を経験することがあります。

① 歩けるようになり、介護タクシーから一般のタクシーへ

通院時に介護タクシーを利用していた方が、歩行練習や自宅での運動を継続したことで、杖を使用しながら一般のタクシーを利用できるようになったケースがあります。介護タクシーは介助が必要な方にとって欠かせないサービスですが、通常のタクシーより利用料金が高くなる場合があります。歩行能力が改善したことで移動手段の選択肢が増え、通院時の費用負担を抑えられました。

② 自分でスーパーへ買い物に行けるようになった

以前は家族が仕事帰りに毎日買い物をしていた方が、自宅での運動や歩行練習を続けたことで、自分で近所のスーパーへ行けるようになったケースもあります。

「野菜など自分の目で商品を選べるようになったことが一番うれしい。」

家族の負担が軽減しただけでなく、身体機能の改善は生活の楽しみや自信にもつながります。

③ トイレまで自分で行けるようになり、介助が減った

立ち上がりや歩行能力が改善したことで、トイレまで自力で移動できるようになった方もいます。その結果、家族が毎回付き添う必要がなくなり、介護負担が軽減しました。介助する時間が減ることは、ご本人の尊厳を守るだけでなく、ご家族が自分の時間を確保できることにもつながります。

④ 「できること」が増えること自体が価値になる

リハビリの目的は、単に筋力をつけることではありません。自分で歩ける、自分で買い物へ行ける、自分で料理ができる、自分で外出できる。このような「できること」が一つ増えるたびに、生活の選択肢も広がります。結果として、生活コストや家族の負担を軽減できる可能性があります。

4. 健康貯金は特別な運動ではない

運動と聞くと、ジムへ通う、筋力トレーニングをする、ランニングを始める、といったことを思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、高齢者にとって最も重要なのは、日常生活の中で身体を動かし続けることです。

日常生活の中でできる健康貯金の例
  • スーパーまで歩いて買い物へ行く
  • 洗濯物を干す
  • 階段を少し往復してみる
  • 椅子から立ち座りを繰り返す
  • 少し遠回りして散歩をする
  • 家のなかで足踏みをする

これらはすべて身体活動であり、立派な健康貯金です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対して座っている時間を減らし、無理のない範囲で身体活動を継続することが推奨されています。

さらに、世界保健機関(WHO)の身体活動ガイドラインでも、高齢者は定期的な身体活動を行うことで、転倒リスクや身体機能の低下を抑え、生活機能の維持につながることが示されています。

私たち訪問リハビリスタッフが目指していること

私たち訪問リハビリスタッフの目標は、長くサービスを利用していただくことではありません。利用者さんが、自分で歩ける、自分で買い物へ行ける、自分で料理ができる、自分らしい生活を続けられる。そんな時間を少しでも長くすることです。

もちろん、病気や加齢を完全に防ぐことはできません。それでも、今できることを維持し、一つでもできることを増やすことには大きな意味があります。それは、身体機能だけでなく、生活の質(QOL)や家族の安心にもつながるからです。

まとめ

投資には長く積み立てるほど効果が期待できるという考え方があります。健康も、それによく似ています。今日歩いた10分。今日、自分で買い物へ行ったこと。今日、椅子から何度か立ち上がったこと。その一つひとつが、未来の自分への健康貯金になります。

健康貯金は、介護を完全に防ぐものでも、医療費や介護費を必ず減らすものでもありません。しかし、自分で動ける時間が長くなれば、生活の選択肢が広がり、結果として家計や家族の負担軽減につながる可能性があります。

物価高だからこそ、節約や資産運用だけでなく、健康への投資という視点も持ってみてはいかがでしょうか。

「今日の一歩は、未来の自分への健康貯金です。」
参考資料:公益財団法人生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」/世界保健機関(WHO)「WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour」/厚生労働省「介護保険制度の概要」

コメント

このブログの人気の投稿

イオンの「買い物リハビリ」が3倍に拡大。データから読み解く、リハビリ職が病院の外で求められる理由

【通所サービス経営】圧迫する送迎コストの課題と解決策

【中国が2028年介護保険導入】65歳以上「2.2億人」の衝撃。日本の介護保険制度から読み解くビジネスチャンスと人材不足の現実